エターナル・フロンティア~前編~
タツキはお気に入りのティーパックをマグカップに入れると、その中にポットの湯を注ぐ。熱い湯気と共に、紅茶の良い香りが漂う。そして一通りお湯を注ぎ入れると、ソラに疑問を投げ掛けた。
「昨日、違う惑星から偉い人物が来たということは、知っているかしら。ニュースで、大々的にやってきたけど」
「ニュースは、見ていない。遅くに帰ってきたから、それに普段からあまり見る方じゃない」
「そう……で、来た人は能力研究の影の出資者の一人よ。アタシも何回か会ったことがあるけど、胡散臭い連中だったわ。能力者を道具か何かと勘違いしていて、思い出しただけでも腹が立つ。アタシは、そんな連中に嫌気が差し辞めたの。本当は、辞めさせられてしまったけどね」
切のいい部分まで語ると、タツキは紅茶を口に含む。すると、余程紅茶が熱かったのか「熱っ!」と言い、反射的にマグカップから口を離す。どうやらタツキは猫舌だったらしく、二口目は味と香りを楽しむようにゆっくりと飲む。だが視線は、ソラの顔から離さなかった。
「遅かれ早かれ、オレは殺される。それなら死ぬ前に、その出資者の顔を見たいと思っている。能力者を道具と思っている、奴等に……安心していいよ。復讐なんて、考えたりはしない」
「冗談でしょ! アタシがいた頃とは、内情は変わっているはず。それにアナタの力は、上にマークされている。下手な動きは、命を縮めるだけ。それに、アナタには生きてほしいのよ」
「確かに、実験は怖い。できるものなら、薬は投与されたくない。二度とあのような朝を……だけど、考えていたんだ。オレだけが、逃げていていいのかと。本当なら、あの時に死んでいた。それを助けてくれたということは、とても感謝します。でも、そのお陰で……」
「あれは、勝手にやったことよ」
「だけど……」
「いいのよ。気にしないで」
全身を包帯で巻かれ、横になっていた姿。それを見た時、タツキは自分の愚かさに気付いた。一体、何の為にこんな酷いことをするのだろう。それまでは、科学者なら誰もが憧れる能力研究ができると喜んでいた。しかし、理想と現実は違った。あの場所は、地獄といっていい。
正常とも取れる精神を持っている者なら、一日として耐えることができない。繰り返される実験。それに伴い、消えていく命。心を閉ざしていなければ、自分自身が潰されてしまう。そして、精神が病む。狂った状況が現実として成り立つ世界など、タツキは未練などない。