エターナル・フロンティア~前編~
「それに、限界だったのよ。アナタの姿を見た瞬間、それが確信へ変わったわ。アタシは、この世界では生きていけないということを……でも、言い訳かもしれない。いつでも、辞められたというのに」
苦笑と共に自身の罪を語っていくが、その表情は何処か切ないものがあった。副主任という地位に就いていたというのに、全てを捨て逃げ出した。あの空間に漂うのは、感覚を麻痺させる麻薬のような空気。長年それを吸い続ければ感覚を狂わせるが、タツキは正常を保ち続けた。
「贖罪のつもりだったのかしら。ソラ君を連れ出したというのは。だけど一人だけ助けたところで、アタシの罪は消えない。それは、わかっている。でも、そうするしかなかった……」
「タツキが、助けてくれたことは嬉しいよ。科学者の中にも……そう、思えたから。しかし、オレは……」
「そう、だから心配なの。彼等は、必要以上にアナタを狙っている。その、稀に見る能力の為。お願いだから、そのようなことは言わないで。悲しむ者がいるということを、わかってほしいわ」
過去、何回も彼等の死に立ち会ったことのあるタツキの言葉。だからこそ、重く圧し掛かってくる。ソラと同年代――いや、中にはそれ以下の者が実験により命を落としていった。
その度に、タツキは泣くのを堪えていたという。涙を流してしまったら、他の科学者に示しがつかないからだ。だが、時として涙がこぼれることが多々あり、影でタツキは苦しんだ。
「幼馴染が、悲しむでしょ?」
「そうかもしれない。イリアは思った以上に、繊細だと思う。普段は、そのようには見えないけど」
「女を泣かせる男は、最低よ」
「それは、経験から?」
「それに関しては、ノーコメント」
「タツキの恋愛って、興味があるよ。どういう恋愛をしてきたのか、参考にしたいと思っている」
「そのように言っても、教えないわ。それはそうと、顔色が悪いわ。毎日、ご飯は食べているのかしら? 駄目よ、きちんと食事はしないと。食は体調を維持するのに、欠かせないものよ」
マグカップを置くとソラの側に行き、状態をチェックする。肌は白くほのかに赤みがさす感じで、どちらかというと血の気がない。それに肌に肌理(きめ)が見られず、体温も低い。ソラはタツキの手から伝わる体温を感じながら、口を開いた。そこからは、か細い声音が発せられる。