ロスト・クロニクル~前編~

 するとサイドテーブルに置かれた、一冊の本が視界の中に飛び込んでくる。そう、それはエイルから贈られた物。それを見た瞬間、頬が微かに熱くなっていく。はじめて、異性から貰ったプレゼント。

 嫌でも、意識してしまう。

 しかし、エイルに特別な“何か”が、存在していたのではない。

 だが――

 様々な思いが、浮かんでは消えていく。

 まどろみの中で、マナは夢を見る。

 それは、儚い物。

 だが、いつかは現実として訪れる。一年後か、もっと遠い未来か。恋愛小説のように甘く切ない物語。

 夢と現実の狭間で揺れ、マナは新しい日を迎えた。
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