ロスト・クロニクル~前編~

 前親衛隊隊長の息子とはいえ、特別扱いをしてはいけない。彼が不適合と判断した瞬間、不合格を突き付ける。親族の地位は二の次で、実力が物を言う世界。全ては、王家を護る為に――

 リデルは、副隊長という立場を貫いていく。無論、私情で物事の判断を下してはいけないのだが、リデルは人間という生き物。時に、迷いが生じる。それを振り払うかのように長い息を吐くと、周囲に視線をゆっくりと走らせていく。そして口を開き、全員に届くように声を発した。

「二次試験を発表する」

 彼女の声音が、一帯に響いた。刹那、張り詰めた空気が周囲を覆う。と同時に、心臓が高鳴る。

 次は、何か――

 エイルとアルフレッド以外の人物は、一斉に唾を飲む。中には、身体を震わせている者もいた。

 淡々と語られていく、試験の内容と方法。それはエイルが予想していた通りのもので、更にアルフレッドを興奮させていった。そして全身の血が沸騰しているのか、やけに鼻息が荒い。しかし興奮しているのはアルフレッド一人で、他の受験者は額に脂汗を滲ませている。

「本番か」

「そうですね」

「腕が鳴る」

「僕は、アルフレッドさんと戦いたくないです」

「何故?」

「骨が折れます」

 その丸太の如く太い腕で殴られたら、骨が粉砕してしまう。それに伴う長期入院は、洒落にならない。その前に魔法でぶっ飛ばせば瞬時に勝敗が決まるが、剣と魔法は分が悪すぎる。それに、同種の武器同士で勝負が行われるだろう。そうなると、エイルの相手は一体誰か。

「剣は、使わないのか?」

「一応、使えます。しかし、今日は違います」

「おっ! それじゃあ――」

 だが、途中で言葉が途切れてしまう。

 そう、二次試験が開始したのだ。

 すぐに武術試験がはじまるわけではない。まずはそれぞれの組み合わせをしないといけないので、受験者が一箇所に集められる。そして、短い質問を一人ずつに投げ掛けていく。「得意の武器は――」それは簡略的な質問であったが、その者の得意不得意を見抜くのに十分だった。
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