ロスト・クロニクル~前編~
そして――
再び、普段のメルダースの姿に戻った。
◇◆◇◆◇◆
演劇の疲れが取れた生徒達は、毎日のように勉学に励む。クリスティとの約束でテストは免除されたが、テスト免除くらいで気楽に構えられているほどメルダースの授業内容は甘くはない。生徒達はそれを身を持って理解しているので、油断せずに予習復習をきちんと行う。
「ねえ、エイル」
「うん?」
「今年、卒業だね」
「試験に受かればね」
「そうなんだよね」
エイルとラルフは今、図書室で復習を行っている。今年、互いに卒業試験を控えているので、今まで以上に勉学に力が入る。
卒業試験を甘く見てはいけない。
これは長く語り継がれる言葉であり、代々の卒業生がこの言葉の意味を痛感するという。それだけ、卒業試験でいい成績を取るのは難しい。多くの生徒は「合格ラインに入ればいい」と思い勉強を頑張り、試験に挑む。
勿論、彼等も同じだった。
今回エイルは「いい点数」を諦めている。定期テストでは「いい点数」を目指しているが、流石に卒業試験では無理に近い。それに本気で目指そうとするのなら、頭の中に教科書を入れないといけない。
生憎、そのような便利な代物は存在しないので、毎日地道に勉強をしていくしかなかった。
「でも、良かったよ」
「何が?」
「エイルと一緒に勉強ができて。普段のエイルだったら、俺を誘ってくれないから。驚いたよ」
「今日は、たまたま。誰かが側にいると、捗ると思ってね。で、ラルフが目に付いたんだよ」
毒たっぷりの言葉であったがエイルと一緒に勉強できるということが嬉しいのか、ラルフは軽く横に流す。普段のほほんっとしているラルフだが、彼も卒業試験のことは真剣に考えている。「エイルと一緒に卒業」が彼の今の目標であるが、気恥ずかしいので話してはいない。