巡り合いの中で

 獣医の感想に、セネリオは一言「そうだね」と、返す。

 どのような生き物であれ、飼い主が愛情を注いでくれることはその生き物にとって幸せといっていい。

 彼女のように、ミーヤを溺愛しているのなら尚更で「いい飼い主に巡り合えた」とセネリオは心の中で呟くと、ミーヤを抱き締めながら最高の笑顔を浮かべているアリエルを眺める。

「クレイド、これで……」

「今日は、助かった」

「いえ、これが仕事です」

 それだけを言い残すと、獣医は次の仕事を行う為にセネリオの前から立ち去る。

 と同時にセネリオはアリエルのもとへ向かうと、彼女に登録が終わったので正式に飼っていいと伝える。

「これで、もう離れずに……」

「大丈夫だ」

「ミーヤ、これからずっとずっと一緒よ」

 嬉しさを爆発させているアリエルに、セネリオはこれからどのようにミーヤを飼うのか尋ねる。

 正式に猫を飼うのだから、それ相応の準備をしないといけない。

 猫専用の餌は勿論だが、寝床も用意しないといけない。

 また排泄物の処理も行わないと、衛生的に悪い。
 
 それらの質問にアリエルは一瞬表情を強張らすと、この世界ではどのような物が売っているのか尋ねる。

「店がある」

「それは、どちらでしょうか」

「案内するよ」

「助かります」

「いいさ。こういうのも、楽しいから」

「楽しい?」

「暇な時間、部屋に篭って趣味に没頭していたけど、こうやって出歩くのも楽しいってこと」

 それ以上に、気が合うアリエルが一緒にいるから――というのは、流石に恥ずかしいので口にはしない。

 アリエルと共に動物病院を出たセネリオが向かったのは、ペット関係の代物が大量に売られている店。

 はじめて入る店に、アリエルは驚きを隠せないでいた。

 また、手に取ってもどのように使用するのかわからない物ばかりで、首を傾げてしまう。

 セネリオは店員を呼ぶと、彼女の面倒を見てほしいと頼む。

 前の店と同様にこの店もセネリオの登場に慌てふためき、店長が姿を現す。

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