巡り合いの中で

「で、状況は?」

「いい結果が出ております」

「予想以上だ」

「有難うございます」

「これなら、心配ないか」

 科学者の一人から手渡されたデータが表示されているタブレットを眺めながら、セネリオは呟く。

 依頼に対して立ち会うことが多いが、だからといって全てではない。

 これも信頼しているからこそであって、今回の依頼も殆どセネリオは手を出してはいない。

 それでも問題なく、研究は続けられた。

 これなら、いない方が捗る。

 そう判断したセネリオはタブレットを返すと、後のことは全て任せると科学者達に告げた。

「いけないか?」

「いえ、もし何かが……」

「心配か?」

「はい」

「信頼している」

 セネリオの言葉に、科学者全員が何も言えなくなってしまう。

 それは驚愕したというわけではなく「信頼」という言葉が、嬉しかったのだ。

 固まってしまっている科学者達に、セネリオは微笑を浮かべると「自分はやりたいことがあるので、そちらを優先したい」と言い、今度は別の意味で驚かす。

「やりたいこと……ですか」

「そう」

「まさか――」

「そんなに、心配しなくていい。下手なことを行い大事になってしまえば、ライアスが煩い」

「そうですね、何かがありましたら……」

 セネリオとライアスは表立っては主従関係を前面に出しているが、裏では友人関係を保っていることを彼等は知っている。

 知っているからこそ、セネリオが何かを仕出かす前にライアスに頼んで止めて貰う――

 が、ある意味お約束になっており、現にセネリオは視線を逸らしている。

 流石にライアスの小言は堪えるので、そのようなことにはならないように努力すると約束する。

 それにセネリオがやりたいと思っていることは、彼の趣味が大きく関係していた。

 よって何処か遠くへ赴くのではなく、自室に篭ってパソコンに向き合うだけ――と、説明する。

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