巡り合いの中で

「ミーヤ?」

「観察しているのかな」

 セネリオの言葉の通り、ミーヤは猫ちぐらの周囲を一周しながら観察しだす。

 すると猫ちぐらを気に入ったのか、四角い出入り口から中に入ると、中で身体を丸め顔だけ外に出す。

「ミーヤは、これが欲しいようだ」

「そ、それでしたら……」

「改めて、受け取ってくれるかな」

「はい」

 このようにミーヤが気に入ったのなら、受け取らないわけにはいかない。

 アリエルは嬉しそうに返事を返すと、顔だけ出しているミーヤの頭を撫でる。

 セネリオは暫くアリエルと話をしていたかったが、この後仕事を行わないといけないので、これで帰るということを告げる。

「態々、有難うございます」

「いいさ。プレゼントしたいから、したまでだよ」

「お仕事、頑張って下さい」

「そんなに込み入った仕事じゃないから、すぐに終わると思う……多分。何かが発生したら、わからないけど」

「それでしたら、お気をつけ下さい」

「有難う」

 アリエルに別れの挨拶をしたセネリオは、退室しようとする。

 その時、猫ちぐらの中で丸くなっていたミーヤが、セネリオに向かって間延びした声音で鳴く。

 どうやらミーヤもお礼を言いたかったのだろう、何とも礼儀正しい猫にセネリオは表情を綻ばすと、軽く手を振り退室する。




 退室後、セネリオが向かったのは研究室。

 ドアが開くと同時に、数名の科学者と目が合う。

「お待ちしていました」

「遅れた」

「いえ、大丈夫です。クレイドの指示を仰がなくとも、これくらいのことは我々で行えます」

 心強い仲間達の言葉にセネリオは頷き返すと、彼等の側へ歩み寄る。

 今、行っているのは実験と研究。

 対象となるのは植物で、劣悪な環境でも問題なく成長するように改良を行っている。

 勿論これも依頼のひとつであり期日は設けられていないが、彼等もプライドがあるので完成を急ぐ。

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