不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
隣からは卓巳君の寝息が聞こえる。

この会話はきっと彼の耳には届いてないはず。

でも、聞こえていたとしても、卓巳君はきっとなんとも思わないよね。


「ねね。店はどうする?」


目の前では優一君と沙耶がイブの合コンの計画をしだした。

私はふたりの話を聞きながら、うなずいたり、時折笑ったりもしたけれど、ホントはずっと胸が痛かった。

油断したらすぐにでも涙がこぼれそうで、気を紛らわせようと、すっかり冷めてしまったコーヒーに手を伸ばす。

小刻みに震える歯がカチカチとカップの縁に当たった。

なんとか、ひと口だけ喉に流しこむ。

飲み頃を逃した上に、お砂糖もミルクも入れていなかったそれは、思った以上に苦くて冷たかった。


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