不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
思ってもみなかった言葉に力が抜ける。


私らしい……? 

彼の言葉が頭をぐるぐる巡る。


「オレ、初めて萌香ちゃんの手を握った時から思ってたんだよね。萌香ちゃんて、ひょっとして料理とか家事とかやってんのかなって」


卓巳君はそっと私の両手を包みこんだ。

そして、初めてあのホテルで私の手を握った時と同じように、自分の口もとに近づける。


「オレ、前に料理屋でバイトしてたからわかるんだ。水仕事ばっかやってると、いくらクリーム塗っても追いつかないんだよね」


その瞬間、カッと頭に血が昇った。

恥ずかしくてどうしようもなくなる。


卓巳君が言っているのは……つまり、私の手がカサカサに荒れてるってことだと思う。

なるべく気をつけて、ハンドクリームをつけているつもりだけど、家事全般をこなす私にとって、この季節はどうしても肌が乾燥して手が荒れてしまう。

もちろん家事のジャマにならないようにと、爪は短く切りそろえてある。

実はこんな自分の手がコンプレックスだったりするのだ。


「こんな手……色気ないよね」


また泣きそうになる。すると、卓巳くんの唇が私の指先に触れた。


「そんなことないよ。これは勲章でしょ? 家族の健康をちゃんと守ってるって」


そう言って、にっこり微笑んでくれた。


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