不機嫌でかつスイートなカラダ ベリーズ文庫版
甘めの低音ボイス。あーこの声好きかも。なんて、コンマ数秒、聞き惚れて、それから慌てて否定する。


「な、なに言って……! 無理無理。私、絶対感じないんだから!」


ああ、やっぱり私はおかしい。

こんなはずかしいセリフを初対面の男の子に言えちゃうんだもん。


「萌香ちゃん! 卓巳と試してみればぁ?」

「うわー、それいいじゃん! お持ち帰りしてもらいなよ?」


ヒトゴトだと思って、周りが好き勝手にキャーキャーと騒ぎたてる。

みんなのテンションが尋常じゃない。

卓巳君はきっと私のことをからかってる。

みんなもそれがわかってて、わざと煽ってるみたい。

酔ってるのはわかるけど、悪ふざけも大概にしてほしい。

そう思って、「もぉ……いい加減に……」と言いかけたところで、横にいる卓巳君がスッと立ち上がる気配を感じた。

何事かと見上げる私に、ごく当たり前のように彼が言う。


「萌香ちゃん、行こっか」

「え?」


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