レンタルな関係。
「旅行のときだって…酔ったって何にもしなかったじゃん、流川…」

「…あの時だって」

「…なに?」

「普通、二人きりの部屋で、しかも男の布団に自分から入り込んでくるなんてことしねーだろ」

「…あ、あれはだって…何にもしないって流川が…」

「男はみんなそう言うんだよ」

「え?」

「簡単に信じるな」


 少しの間があいて。


「俺だって、何してたかわかんねーんだぞ」


 押し殺した声。


「男がいるくせに…簡単に他の男になつくなよ」


 手首を持つ手に、チカラが入る。


「部屋を借りてるだけで、お前とは交換条件でつきあってるようなもんだからな」

「…流川…痛い…」

「人のものに、勝手に手ぇ出せねーだろ」

「…放して」

「もっとも…レンタル関係じゃなければだけどな」

「…流川?」

「お前さ…」


 流川の右ひじが折れる。

 カラダの半分が近づいて、息が首筋をかすめる。


「アイツのこと、どう思ってるわけ?」


 え…? アイツ?


「要のこと、どう思ってんだよ」


 要くん?

 どうして、要くんの名前が出てくるの?


「一ヶ月もほったらかしで、連絡も寄越してねーんだろ?」

「……そう…だけど」

「しかも俺なんかに部屋貸して。お前に相談もなしに」


 それは…私も驚いたけど…でも。


「…要くん…忘れっぽいし…」

「そんな理由で彼女のこと放っておくかよ」

「…仕方ないじゃん…合宿に行ってるんだし」

「もうやめれば? アイツのこと」

「…え?」

「愛されてねーんだよ、お前」

「…なっ」

「バカじゃねーの? そんな男に引っ付いて」


 なんなの…

 なんで流川にそんなこと言われなきゃなんないの?







 

 
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