レンタルな関係。
 その手が止まったことに。

 急に心細くなる私。


 要くんを見上げたまま、じっと待つ。

 
 要くんの口が開いて、

 何でもないことを言ってくれるのを。


「もしかして…」


 …ウソを、ついてくれることを。


「唯衣……聞いてた?」


 ――けれど


「…俺たちの話」


 どうして…

 はぐらかしてくれなかったの…?


「唯衣…」


 要くん。

 正直すぎるよ…


 ただ私の話を聞いてればよかったのに。

 そうなんだ、って。

 何飲んだの? とか、どんな店だった? とか、

 そんな答えだけでも、よかったのに。

 
 そうしてくれれば私も…

 その先の話は、聞かなくてすんだのに…


「聞いてたんだな…」


 私の頭から手を離した要くんは、膝の上で手を組んで、その手をじっと見下ろしていた。

 しばらく沈黙だけが流れて。

 
 私は、自分で振ってしまった話を、後悔した。

 まだ何も聞いてないのに、涙が出そうになって。

 この沈黙が、すごく痛くって。


 口を開くことが、できなかった。





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