レンタルな関係。
 要くんの話は、こうだった。


 サナエという人と知り合ったのは二ヶ月前くらいで。

 要くんのことを好きになった彼女は、同じバスケットボールのサークルに入って。

 今回の合宿にも勿論参加したらしく。


 合宿自体は二週間の予定で。

 帰ってきてからすぐに、前々から約束させられてた彼女との…

 旅行に付き合ってたらしく。

 
 それでも要くんの心には私を騙しているという負い目があって、

 旅行は二日で切り上げて帰ってきたらしい。


 合宿前に私に一ヶ月と言っておいたこともあって、

 そのあとは友達のところに泊まっていて。

 折を見てアパートに戻ってこようと思っていたらしい。


 
「サナエがしつこいっていうのもあるけど…惹かれてたのも事実でさ」


「勝気で向う見ずなところもあるけど、俺のことは本気で好きになってくれてて」


「ダメだな、俺。ふらふらして。一時の感情なのかどうなのか…わかんねーんだ」


 
 要くんの話は…

 誰かの話に似ていて。

 次第に静まってくる、胸の奥。



「唯衣のことは好きだし…サナエのことも…昨日もな、実はサナエと会ってたんだ」


「どうしても会いたいって電話が来てさ。泣いてて。会って飲みに行った」


「彼女がいるって話は前からしてて。それでもいいんだって。振り向いてもらえるように頑張るからってさ…そんな話をしてた。ずっと泣いてるから…なかなか帰れなくて」



 要くんが優しいのは…私も十分知っている。

 酔って泣いてる彼女を、少し気になり始めた彼女を、放って帰ってくるなんてことできなかったんだろう。



「唯衣さ…」


 要くんは話を切って、私の顔をのぞきこんだ。

 私の涙は引いていて。

 そっと、要くんに視線を移す。


「…うん?」

「アイツに…流川に、なにか聞かなかった?」

「…え?」

「昨日、流川一旦帰ってきたんだろ、部屋に」

「…うん、帰ってきたけど…聞かなかったって…なにを?」

「…そっか…ホントに話さなかったんだな、アイツ」

「…なに?」




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