レンタルな関係。
 
胸のなかでフガフガ息をする私のことなんて、完全無視。

 
時々、「ふっ」なんて、鼻先で笑う声まで聞こえて。

 
 
まさか、どさくさに紛れてここで私を襲う気じゃないでしょーね?!

 
っていうか、どういう趣味なの、あんたっ!


 
流川の腕は、ゆるんだり、強くなったりを繰り返す。

 
バスタオルにすっかりぐるぐる巻きにされてる私は、はねのけることさえできず、されっぱなしで。


 
それでも……


 
うっすら雨に濡れてる流川のTシャツの胸は温かくて。

 
次第にぼんやりしてくる頭の奥…



「ふぁ…」


 
たまらず息を吐き出せば。



「なに、ぼんやりしちゃってんの?」


 
肩をつかんで私を解放した流川に顔を覗き込まれ。


 
「な、なにすんのよ…っ」


 
恥ずかしくなって声を荒げれば。



「お前まさか、抱き締められてうっとりしたんじゃないだろーな」


 
ニヤリと笑う流川。



「っ…ち、違うしっ」


 
絡まったままのバスタオル。

 
この格好でいくら反抗しても……

 
なんだか私、マヌケです。



「俺が興奮して抱き締めたとでも思ったんだろ?」


 
近寄る流川の顔に。



「や…違うもんっ。っていうか、そうなんでしょ?! どさくさに紛れて、私を襲おうとして……」


「この俺が、お前なんかに興奮するかってーの」


「……は?」


「しぼり出してやったまでだ」


「し……?」


「雨水をな」


 
ガーン……


 
頭、打たれた気分…


< 59 / 314 >

この作品をシェア

pagetop