春告鳥とクマとねこ
「……そうだね」



その返事に、一瞬、犬飼くんの顔がこわばる。

だけどもわたしは、構わずに。またすぐ、言葉を紡いだ。



「……犬飼くんとが、いいかなあ」



言ってから、やっぱり照れてしまって。わたしは赤くなっているであろう顔を見られないように、うつむく。

するとすぐとなりから、衣擦れの音。それに目を向けるより先に、わたしの握りしめた両手を、それよりも大きな手が包んだ。



「……俺も、」



届いた声に、勇気を出して、顔をあげる。

わたしのだいすきなクマさんは、照れくさそうに、笑っていた。



「俺も、三宅がいい」



わたしのこぶしを包む手に、少しだけ力がこもる。

犬飼くんの言葉を聞いて、その体温を改めて感じたら、なんだか、泣きそうになってしまった。



「い、いぬかいくん……」

「ふは、三宅、なんで涙目なの」

「だ、だって、……うれしい、から」

「……これだから、三宅は……」



ふっと、犬飼くんが、なんだか困ったように笑ったかと思うと。

ゆっくり、彼の顔が近付いてくる。

自然と、わたしは、目をとじていて。


──くちびるが触れる、直前。

どこからか、春告鳥の声が聞こえた気がした。










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