大好きなんです
さっきのこともあってあたしの心臓はいつもより速くドキドキしてる。
でも、嬉しいなぁ…
「せっかくですし、一緒に玄関まで行きましょうか?」
「えっ?あ、うん」
「少し待って下さい。準備しますから」
「うん」
…………うん?
あれ、今……流れで玄関まで一緒に?
……ええぇーーっっ!!?
カアァ、っと顔に熱が集まる。
き、霧谷くんは、ただ、純粋に、一緒に行こうって言ってるんだから!!
意識しちゃダメだってば!!
とは思うものの、集まった熱は引いてくれなくて……
峰くんが全ての元凶だ。
峰くんめ………!!
「桃園さん。僕の名前知っていたんですね」
「え?」
一人で悶々と考えていたとき、帰り支度をしながら霧谷くんが穏やかに言葉を紡いでいく。
「僕の名前って、いつも一度は間違えられるので、凄く嬉しかったです。
ちゃんと名前呼んでくれて」
うわっ………
あたしに向けられたふいな笑顔に凄くキュンとしてしまった。
う、嬉しかった、か……
うー…熱いよ……これ以上熱くなったら蒸発しそう。
「な、流って、"リュウ"とも呼べるもんね」
「はい。だからいつも苦労しています」
照れ隠しで言ったんだけど、霧谷くんは律儀にちゃんと返事をしてくれた。
あぁ……また霧谷くんのいいところ見つけちゃったな。
「そうなんだー。大変だね」
「はい」
……あれ?
なんだろう……違和感を感じる。
……あれ?あれ?
………あれ?
あたし、霧谷くんの前で名前言ったっけ?