蜜は甘いとは限らない。【完】




変に落ち着いてるあたしは、渋々退いた寺島のおかげで動くようになった体を起こす。


あぁ、体中が痛い。




伸びをしようと両手を上に伸ばすと、腰から変な音がした。





「...それじゃあ、あたしたちの苗字の話からするわ。

あたしと葵の“今”の苗字は知ってるだろうけど瀬崎。
でも、本名は嵐川なのよ」

「嵐川って、あの?」

「...何を思ってるのかは分からないけど、きっとそう。
“嵐川コーポレーション”、父が経営している会社よ」

「それじゃあ今日は、」

「その、パーティがあってね」





服を見れば分かるでしょう?

そう言うように、ドレスの裾を引っ張って見せる。



細いドレスだから、そこまで引っ張れないけれど。




「で?なんで今は瀬崎なんだ?」

「...瀬崎は母方の苗字よ。
世間体を気にしてるから、離婚はしてないだけでほぼ離婚状態」

「別居、ってことか」

「それだけじゃないけどね」




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