蜜は甘いとは限らない。【完】
「なら、この会社を大きくする自信が…」
「それだけじゃなくて、変えます」
こんなに大嫌いな会社に大好きな葵のために継ぐのだから、どうせなら。
「自分の好きなようにすれば、ここに継いだことが苦にならない」
「そんなことをするのなら、」
「葵には、継がせない」
継がせて、たまるものか。
この会社のせいで葵は変わってしまったのだから。
それなら、この会社自体をあたし自身が変えてしまえば問題ない。
唐突に浮かんだこの考えは、あたしにも嵐川さんにもいいようになる。
それに、あたしも自分の気持ちに素直になりたいから。
「チッ、好きにしろ。
......なら、一度チャンスをやる」
「チャンス?」
「明日から1ヶ月、この会社の社長をしてみろ。
もちろんまだ代理だけどな」
「な、何を言ってるんですか?!」
小首を傾げたあたしに言った言葉に、あたしだけでなくこの場に居る全員が反応する。
...この人は何がしたいの?
明日からって...ここにいる最近売上を上げていない人たちはどうするの?
そんな人たちを、数日前までOLだったあたしに押し付けるわけ?