蜜は甘いとは限らない。【完】
「ど、して…」
「葵との約束だからな。
お前が“1滴”でも涙を流せば、葵が跡を継ぐと」
「そんなの、あたしは何もっ」
「お前の大好きな弟が自分から継いでくれるんだ。
喜んで任せられるだろ?」
「ふざけないで!」
どうして、葵とそんな約束を…。
「…まさかとは思うけど、葵に何か言った?」
「何か、とはなんのことだか」
「惚けないでよ!
ねぇ、親として最低なことしてるって、分かってる?!」
自分の子供の将来潰してる。
冷えていた頭もいつの間にかまた熱くなっていて、思いっきり目の前で笑うこの人を睨み付ける。
視界が少し、赤い。
「分かる、分からないはどうでもいい、跡継ぎが欲しい。
もし、お前がこの会社のことを考えて大きくする自信があるのなら跡を継がせてやってもいい」
「どれだけ…っ、何様のつもり?!」
「何様?
馬鹿か、今は会社の話をしてるんだ。
分からないのか、お前にはこの会社のことが」
「…。」
分かろうとも、思わないわよ。
こんな会社、母に聞いた時から大っ嫌いだったのだから。
だけど…
「分かりました、」
それなら、
「あたしが、跡を継ぎます」
あたしが、変えてやる。