蜜は甘いとは限らない。【完】
「打ってない。
それで、空いてるの?空いてないの?」
『っ、…空いてる』
「そう、なら良かった。
ねぇ、今から会えない?てか会え」
『いきなり命令かよ。
俺に向かっていい度胸じゃねぇか』
「いいから、あんたのダーイ好きな女のあたしが言ってんの。会え」
『チッ、会えばいいんだろ?
何時にどこへ行けばいい』
「そう、ね。
あの、8時にあたし達が初めて会ったあの街で」
『分かった』
その言葉を最後に電話は切れた。
…どうしても、寺島との電話は少し緊張する。
これはなんだか、治らないような気がする。
「…家に戻らなきゃ」
なんだかスーツで会うのは恥ずかしくて、家に帰ろうと会社を出る。
初めと違い、出る時はものすごく奇異な目で見られた。
あたしはそんなに奇妙なモノに見えるのか。
足早にそこから出れば外には来た時と同じ車が止まっていた。
…まさか、山中?
そう思ったあたしは少し急いで車に駆け寄った。
「山中?」
「姉貴、」
「葵?!」
車に乗り込めば山中が運転席にいて、その後ろに葵が乗っていた。
どうして?
「どうして葵がここに…。
ていうか、葵アレはどういうことよ!!」
「アレ?アレってなに…「跡継ぎの話しよ!!」…あぁ、」
あぁ、じゃないわよ!
「あたしがいないところで、あんな約束しないで!」
「そうしないと、姉貴は俺に譲らないだろ」
「当たり前、葵はまだ学生でしょ?!
あんなことは、大人のあたしに、」
「だから、子供扱いするなよ!!!」