蜜は甘いとは限らない。【完】




「いつも、いつも俺は…!!」

「葵…」

「守られるだけの存在になりたくないんだよ!」

「そんなことない!!」




守られるだけの存在?

そんなことない。




「いつもあたしは葵がいてくれたから頑張れた。
葵が側で守ってくれたからでしょ?」

「…俺はなにも、」

「じゃああの手紙はなに?

“自分の気持ちを大事にして”って」

「あれは、姉貴が素直にならないからで」

「それだけでも、あたしの中の気持ちは楽になったの」




たった1文だけの手紙でも、あたしは変われた。
言いたいことを言えた。




「あのね、あたし明日から1ヶ月。
社長代理するのよ」

「…は?」

「社長代理」

「……山中、」

「…はぁ、お嬢様。
口を開かないでと、頼みましたよね?」

「そんなもの、聞くわけ無いでしょう。
て、葵が山中に言うように言ったの?」




あ、目逸らした。

無言は肯定として取っていいのよね。


…なんで葵と山中がそんな話をするような仲なのかは分からないけれど。




「私は昔から、葵様のお世話をするように旦那様に頼まれていたんですよ」

「あ、そうなの?」




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