俺と無表情女の多表情恋愛

┗にやらかしてしまうとき


「今日の休みは桐生だけか。おまえらも最近風邪流行ってるから気をつけろよー」

担任のその言葉を最後にHRが終わる。
いそいそと皆が帰り支度を始める中、HRを終わらせた担任は俺のもとにやってきた。


「槙島ー、おまえ桐生と仲良かったよな?」

「え、まぁ……」


クラスの奴らの中では俺が1番話してるのは確かだけど、1番仲が良いかと聞かれれば少し返答に困る。
もしかしたら桐生には俺が知らないだけで普通に女子の友達とかいるかもしれないし…。

少し言葉を濁したけれど、そんなこと気に留めなかった担任は俺に1つの茶封筒を差出してきた。


「これ、今日中に桐生に渡しておいてもらいたいんだ」

今日おまえが部活ないことは顧問に確認済みだ、と無駄にどや顔かましてくる担任。
しょうがないから、とその茶封筒を受け取ると教科書と一緒に鞄に詰め込んだ。





教室を出て、とりあえず桃太郎たちの元へ向かう。
桐生が休みだったってことは、もしかしたら腹すかせてるかもしれないし。
正直、桃太郎より桃太郎の子供たちの方が心配だ。
昼に売店で買っておいたパンを持って裏庭へ向かう。しかしそこに桃太郎たちの姿はなかった。




「桃太郎のやつ、どこいったんだよ…」

出産明けで子供たちも小さいから、そんな遠くまで行ってないはず。
それなのにあたりを探してみても気配すらない。
とりあえず買っておいたパンをいつも桃太郎がいる場所に置くと、桐生のもとに向かった。




やっぱでけぇな……桐生の家。
この前桐生を送った以来で、改めて大きさに唖然とする。

恐る恐る担任に教えてもらった部屋番号をインターホンに入力すると、少ししてから聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「はい」

「桐生か?槙島だけど」

「……何の用?」

つんとした態度をとる桐生に、通常運転だと少し安心する。
担任から預かった茶封筒のことを説明すると上がって、と自動ドアが開けられた。







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