無口な上司の甘い罠
「アンタ、仮にもこの営業の課長でしょ?

もっと、他の社員、こき使えばいいのに」

そう言いながら、書類を片付けていく。


「他の奴、使えないんだよ・・・

こういう時は、今日子が一番頼りになるんだよ」

隆盛は、困ったように笑った。


「使えない社員を、使えるように育てるのも、課長の仕事でしょうに」

ぶつくさ文句を言いながら、仕事をする。

あ…下を向いた途端、掛けていたメガネがズルけた。

指でそれを直し、また仕事をこなす。


「今日子って、コンタクトにしねえの?」

隆盛は私をチラッと見て、またパソコンに向かう。


「コンタクト、って疲れるの。メガネの方が楽」

「メガネかけてなかったら、美人なのに」

「・・・」

…数年前まではコンタクトだったよ。

…でも、それも止めた。恋を諦めたのと同時に。



「そこ、私語が多い。仕事しろ」

「「?!!」」

私たちの後ろから、低いトーンの声が聞こえた。
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