無口な上司の甘い罠
その声に、そっと振り返ると、

そこには、私たちの直属の上司。宮本瀬名部長の姿があった・・・

苦笑いを浮かべる私と隆盛。

パット前を向き、仕事を始める。

宮本部長は無口・無表情。言葉を発する時は、大抵低い怒声。

決して大声で怒鳴るわけではない。

今みたいに低いトーンで、ズシッと来る一言を放つ。


仕事も出来て、イケメンで、スタイルも抜群な宮本部長。


それでも、皆から恐れられる上司。

中には、隠れファンもいるけれど、近寄る事すら困難なオーラを放つ。

「坂口、着いて来い」


「・・・は?」

私の目線は、自分の手元にくぎ付けに・・・

だって、だって、恐れ多い宮本部長の手が、私の手を握っている。


助けを求めるように、隆盛を見た。


「・・・その案件は、そんな急ぎじゃないから」

「?!」

・・・コイツ、私を見放したな?

「急ぎだ、サッサと来い」

「・・・・」

引っ張られながら、どこかに連行される私は、

一体どうなる事だろう。
< 3 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop