黒の瞳
ブレイクタイム:夢
「――最後の最後でやっと優勝なんて、あたしも随分執念深いわよねぇ。」

「そんな!努力の賜物ですよ!」

「だからさ、事務的っていうかお堅いんだって、松中さんは。そうだ、愛子ちゃんって呼んでいい?」



 無邪気に笑った年上の彼女は、レストランで沢山の話を聞かせてくれた。スケートを始めたばかりの頃のことや、エッジ判定に苦しんだこと、トリプルアクセルへの憧れ。勿論、スケートのことばかりではなく、これからのことも話してくれた。

 まずは、長年の夢だったヨーロッパを巡って、綺麗な景色や人々の笑顔を撮りたい。ゆくゆくは中東にも趣いて、現状を伝えつつ、現地の人達と交流したい。生き生きと語る彼女の表情は輝きに満ちていて、明日のエキシビションが最後の舞台だなんて信じられなかった。
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