黒の瞳
 レイバックスピンからの足替えコンビネーションスピンは、不安や迷いを表しているように思える。抱えていくものが多すぎて、自分だけではもうどうしようもない。そんな時は、寄り添ってくれる人や仲間達のお陰で、また前を向いて歩き出せる。コンビネーションジャンプからのトリプルサルコウ、ダブルアクセル、トリプルルッツは、重苦しい期間を乗り越えて羽ばたいていく彼女自身の姿と重なって、涙がこぼれそうになった。

 “人は、神様にはなれない。”だけど、誰かの光になることはできる。いつか、“自分のパフォーマンスで、誰かの心を明るく照らしたい”と話していた亜有さんは、その使命にも似た夢を、十分全うしていると思う。私自身、こんなに感銘を受けているのだ。フライングキャメルスピンは、綺麗に伸びた手足がとても美しかったし、ステップシークエンス、コレオシークエンスも、彼女のエッジの効いたスケーティングがよく活きている。その穏やかな笑顔は、もうスケート人生に悔いがないからなのだろうか。名残惜しさを感じながらも、手が痛くなるくらい大きな拍手を贈った。
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