【完】籠球ロマンティック
……筈、なのに。


「なんっ……で!あそこにトラがいる!?」


その、完璧な筈のボールの軌道を、トラの長い腕が捕らえ、ボールは外に出る。


まだ外に出たから、またボールはうちのオフェンスだが、今ので良い空気を絶ち切られた気がした。


トラは、俺の記憶だと個人技が優れたプレイヤー。あんな完璧なプレイを邪魔出来るようなプレイヤーじゃない筈なのに。


だとすれば、これはそのトラの運動能力や技量が分かったうえで、誰かが先回りさせたとしか思えない。


「あいつ……ダイスケ、か!」


なんて頭のキレるプレイヤーなんだ。ハーシーが出来ると踏んで、何手も先を読み、保険をかけていたなんて。


「レン君、貴方はダイスケのプレイを初めて見るわけじゃないでしょう?去年の全中、思い出さない?」


呆気に取られていた俺に、隣の美鶴がコートから目線を外さぬまま告げる。


そう言われ、俺はひとつの試合を思い出す。去年の全中……俺が一番苦しんだ、ベスト8決定戦の試合。
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