イジワル上司に恋をして
突然西嶋さんが笑い出して、わたしは目を点にしたけれど、途端になんだか恥ずかしくなって顔を赤くする。
「な、なんか、わたし、おかしなこと言いました……?」
「いや……くっ、くくっ」
「だ、だって……経済的にも、手頃だし……なんて」
どうなんだろう? 普通はそういうこと言わないものだった?
でも、そこまでヘンな提案でもなかったような……。
窺うように、西嶋さんが笑いおさまるまで黙って顔をみていたら、ようやく笑いが落ち着いてきた彼が、目を細めたまま言った。
「うん。そうだね。財布に優しい」
片目をこするようにして、ひとしきり笑ったとばかりに「はー」とか言って、わたしを見る。
ニコリと改めて笑顔を向けられると、ドキンとひとつ胸を打った。
「見栄張ったりしても、疲れるだけだよね。長く付き合うつもりなら余計に」
なっ、長く付き合うって……?!
それは、つまり、あのことを意味しての発言ということなのでしょうか?!
カチコチに固まったわたしは、それに対して返事をするどころか自然な表情が出来ているかすらも微妙。
そんなわたしでも、変わらず微笑みかけてくれる西嶋さんは、やっぱり素敵に見える。こんな優しい人が、わたしを……って、迷うことなんかないじゃない。
ポーッと見つめたわたしに、すっと西嶋さんは手を伸ばす。
ドキリとしたけど、その手はわたしがよく妄想するような、頭を撫でたり、唇をなぞったり……そんなことをするわけなくて。