イジワル上司に恋をして
「お待たせ致しました」
わたしの声でその女性が、ふ、っと顔を上げた。
元々白い肌のその人は、寝不足なのかさらに白く見えて。
すごく可愛らしい顔立ちなのに、それを曇らせている表情が緊張感を伝えてきたのと同時に、勿体ないと思った。
「ご新婦さまは、ミルクはお嫌いではなかったですか?」
「え……? あ、はい……」
「そうですか。よかった……。迷ったんですけど、シンプルなホットミルクを淹れてきたんです」
そう言って目の前のテーブルにコトッとカップを置いた。
……今日も運よく持っていたマシュマロを添えて。
それを見届けていた香耶さんは、控えめに「少しお待ちくださいね」と席を外した。
本当は準備があるんだろうけど、忙しい雰囲気をこの女性に見せたくないんだろうと思った。
だから……というわけでもないけど、わたしはショップにお客さんがいないことを確認してからゆっくりと口を開く。
「わたし、よく気分を落ち着かせたいときとかにはこれを飲むんです。甘党なので、砂糖を入れて。でも、そこは好みかと思ったので。マシュマロはそのまま召し上がってもいいですけど、ミルクに入れるとまた美味しいですよ」
自分の好きな話題になると饒舌になる。
でも、その女性は嫌な顔ひとつしないで、強張った顔に一所懸命笑顔を浮かべて言った。
「……マシュマロ、初めてです。入れてみます」
そうして細い指でふんわりとしたマシュマロをポンっとカップに浮かべる。
スプーンで回し終えたあとに、ゆっくりと口をつけてくれた。
「……あ。本当だ。甘すぎなくて美味しい」
「よかったです」