幼なじみ〜近くて遠い恋の距離〜
「ごめんな、電話」
岡崎さんとの電話を終えた涼は、気まずそうな声であたしに謝った。
ウソをついていたことを聞かれたからだろうか。
何だか申し訳なさそうな声だった。
「ううん、大丈夫。岡崎さんには今日…法事って言ってたんだ?」
前だけを見ながら、そう返事をした。
「あぁ…うん。本当のこと言えないだろ。何でだか分かんねーけど…ヤキモチやかれんだよ…お前といると」
だけどその言葉を聞いた瞬間…
どんどん滲んでいく景色に、瞬きが出来なかった。
目を閉じると…今にも涙がこぼれそうだったから。
それからあたし達の間には、会話という会話はなくて。
あっという間に家に着き、家の前ですぐに別れた。
だけど家に帰り、自分の部屋に入った途端…張り詰めていた糸が切れたように涙が溢れてきた。
「みのりー?ご飯は?」
「…っ…いらなーい」
必死だった。
ドア越しに声をかけてきたお母さんに気付かれないように、必死で普通の声を絞り出した。
泣き声を押し殺し、ヒクヒクなる息を整えた。
「そう…じゃあ冷蔵庫に入れておくから。明日にでも食べなさいね」
「はーい」
シーンとなった空気。
お母さんがそこにいなくなると、また涙が溢れてきた。
泣きながら、目が覚めていくような気がした。
もういい加減、分からなきゃいけない。
涼にとっては、あたしはやっぱりただの幼なじみなんだ。