幼なじみ〜近くて遠い恋の距離〜


「あれ?ユリは⁉︎」


突然背後から聞こえてきた声にハッとなり後ろを振り返った。


「あっ…」


ウソ…何でハルだけじゃないの?


「トイレ…行ったけど」

「ふーん、あ、アイス買ってきたぞ、ほら」

「あ、ありがと 」


渡されたアイスをとりあえず受け取った。


だけど、ハルの隣に立つ涼の姿にとにかくあたしはビックリしていた。


ユリ…涼も来るなんて言ってなかったよね?

そう思いながらアイスの袋を開けようとした。


「えっ!涼も一緒だったんだ⁉︎」


だけどその瞬間、聞こえてきたユリの声。


なんだユリも聞いてなかったんだ…。



「っていうか聞いてよ!釣り具屋でトイレ借りれたんだけど、座った瞬間目の前にゴキブリがいてさー、もう私パニックじゃん!パンツおろしてんのに必死でトイレから出て」

「ははっ、何だよそれ」


マシンガンのように話し始めたユリにハルが呆れたように笑う。


「でさ、釣り具屋のおじさんに言いにいったのね。そしたら、はいって殺虫剤渡されたの。え?って感じじゃない?私がやるの?って感じでしょ⁉︎ありえなかったんだけど!」

「あははっ」

「ははっ」

「つーかユリ、必死で喋り過ぎ」


川辺に響く笑い声たち。


あたしも笑ってて、ハルも笑ってて。

ユリは必死で話してて。

涼も…それを聞きながら笑ってて。



「でも私、ゴキブリに勝ってきたからね」


なんて…ドヤ顔で言うユリに、また笑って。


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