ベジタブル
「何をしている」
「はっ! こ、これは――」
「まあ、いいじゃないか」
その言葉に、ジークの眉が動く。そして言葉を掛けてきたのは弁当を渡している人物なので容赦なく圧力を掛け、彼等に冷徹とも取れる視線を向ける。この瞬間、吸血鬼の本性が表れた。
「そうでしょうか。それは、調理に使用する酒です。ですので、飲まないで貰えますか。それ、高いですよ」
「そ、そうなのか」
「ええ、何せ二十年物ですから」
「そんな、酒が……」
「勝手に飲まなければ、問題はないです」
「ごもっともで」
ジークは床に転がっていた瓶を手に取ると、貼られているラベルに視線を落とす。買ったばかりの酒は三日も持たないうちに、全ては腹の中に納まり飲んだ者を酔わす。まさか料理酒を酒盛り用の酒にしてしまうとは、情けないような恥ずかしいような……複雑な気分でいっぱいだ。
「料金、増やします」
「それは、困るな」
「困るようなことをなさるからです」
ジークの言葉は、絶大な威力を示す。弁当を貰いに来た男達は互いの顔を見合わせると、宴会を中断させる。それを見たジークは瞬時に退散するように彼等に言うが、全員が未練を残しているのか、帰ろうとしない。それほど、この場所に置いてある食材が美味しいのだ。
「何故、帰らないのですか」
「いやー、それは……」
「今回は、許して欲しい」
「それは、もういいです。本当に許してほしいと思っているのでしたら、早くお帰り下さい」
「いや、それはできない」
「弟子入りしたとこの二人から聞いた。その、祝いをしたいと思っている。実に、喜ばしいことだ」
言葉ではそのように説明しているが、要するに彼等は酒を飲んで暴れたいのだ。それを証明するかのように、酒瓶の他に食べ物が食い散らかされている。それは全て、ジークが用意した弁当の食べカス。それに、料理の材料として使用するはずだった野菜の欠片も落ちていた。