*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語
泡雪は少しずつ回復を見せていた。




ぐったりとして動けなかった泡雪を、沙霧が藁の寝床に寝かせてやっていたが、今では上半身を起こせるようになっている。





泡雪が相変わらずほとんど口をきかないので、沙霧は暇なのにまかせて、手持ちの紙に歌を書きつけたり、墨絵を描いたりしていた。






「…………沙霧」






無愛想な声で唐突に呼ばれ、沙霧は筆を持つ手をとめて振り返った。




藁の中に埋もれている泡雪が、じっと沙霧を見つめている。





「ん? どうした、泡雪」




「………咽喉が、渇いた」





不機嫌そうな顔で泡雪が呟くと、沙霧は微笑んで頷く。





「ちょっと待っていてくれ。


すぐに持ってきてやるからな」





「……………」





沙霧は身軽に立ち上がると、木戸を開けて外に出て行った。




泡雪はやはり険しい表情でそれを凝視していた。








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