クローバーの起こしたキセキ
お母さんは目を伏せて言った。
「麻美、ありがとう。
お父さんのこと、忘れたわけじゃないの。
でも、そろそろ過去を振り返ってばかりじゃなくて新しい未来への一歩を踏み出そうって思って。
私が幸せになるんだもの、きっとお父さんも許してくれるわよね」
にっこり笑う。
そしてそのお母さんの肩にさり気なく置かれている右手の主、伊藤先生も笑った。
伊藤先生、私のお父さんになるんだ・・・・・。
お父さんができるっていうことにあまり実感が持てない。
今までお父さんが居なかったから。
「お母さん、家、帰ろ!先生、ありがとうございました。
あと、先生はまだお母さんと結婚してないので私の方が優先権高いですからね。
先生が羨ましがるくらいのことぜーんぶやってやりますから」
「それは困るなぁ」
困ってもらうために言ったもん。
「さようなら〜」
多分次会う時は結婚式だろうなぁとぼんやり思う。
海原君のこと、お母さんに言おうかな。
でも落ち着くとそんな大事なことでもないような・・・・・。
でもでも、大事かも・・・・・。
「麻美、着いたわよー。
早く家入りましょ?明日からもう仕事入っちゃったの、ごめんね。
だから今日はゆっくり・・・・・ってまだ今お昼よね、学校は?」