ぎゅってね?
気づかれたくない。

終わりたくない。

気づいてほしい。

私を見てほしい。

そんな揺れ動く気持ちを抱えたまま、私は今日も玲人の隣にいる。
玲人からの呼び出しはいつも急だ。
今日はたまたまお昼時だったから、一緒に食事をとることになった。

「なんだ?莉子、俺に見惚れてたのか?」

コンビニのおにぎりを食べながらにししっとそう笑う玲人。

「バーカー。ご飯粒つけてる間抜け面に呆れてたのよ」

そうだよ、なんて言えなくて。
可愛くない返事ばかりしてしまう。

「マジか!?早く言えって!!」

子供みたいにあわてる玲人が可愛くて、私はご飯粒をとってあげる。

「ほら、取れた」

まったくもう、と呆れた口調でそう言った瞬間私の手首は玲人に捉えられ、そのまま私の指先は彼の唇に触れる。

私はこれ以上にないくらい目を見開く。
息が、止まるかと思った。

ご飯粒を玲人が食べたんだという思考が追いつくより先に、全身に熱が回る。

「莉子」

にやりと意地悪く口角を上げた玲人が私を呼ぶ。

「//////っ」

言葉は声にならなくて、ただただ見返すしかできない。
私は今、どんな顔をしているんだろう?
いつもみたいに、なんでもない表情を作れているだろうか?

「お前、俺のこと好きだろ?」

玲人は聞いてなどいなかった。
その言葉は確認だった。
私が玲人のことを好きなんだって。

わざとやったんだ、と分かった瞬間私は玲人の手を振りほどいて何も言わずに走り出していた。

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