女達の戯言
しかし美佐子は考え直した。美佐子とて普通の成人の女なのだ。やはり愛する人の胸に抱かれてみたいと素直に思えた。なので今回、純太郎から提案された婚前旅行。美佐子は行く事にした。

と言っても丁度、純太郎は職場で新しいプロジェクトが始まり、中々纏まった休みが取れず結局、近場の温泉に一泊で行くことにした。日程、宿泊先、向こうでの予定…………全ては美佐子が前もって速やかに用意をした。

全ての用意が整った時、美佐子はふと考えた。





これでいいのかしら?と。

美佐子にもう迷いはなかった。少し自分の予定とは違うものの、純太郎を愛しているのだ。結婚前にこういう事になるのも良いだろうと。ただ、やはり美佐子は不安だった。何事も前もって用意をしてきた美佐子。異性との行為に関しても勿論、知識だけは豊富であった。

しかし、それをいきなり実践というのは如何なものなのか……と。もしやその時になり、頭に叩き込んでいた知識が全て飛んでしまったら……そう考えただけで美佐子は身震いがした。何事も前もって用意をしておけば問題ないのだ。テストにしても行事で何かを発表するときにしても美佐子は兎に角、本番に備え何度も何度も同じことを繰り返しやって来たのだ。





こんなのやっぱり私らしくないわっ。


美佐子は漸く自分を取り戻し、決心が固まった。


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