女達の戯言
まただ。


あたしの悪い癖。


直ぐに自分一人の世界に
入っちゃって、どんどん
好き勝手に妄想を走らせてしまう。


今もコンビニで買い物した後に
店員とお客の恋かぁ……
だとしたら相手は年下がいいな
とか
きっかけはこんな感じが良いよね
とか……
なんて勝手にどんどん妄想していたら
道の端でボーッとしているところを
釣り銭落としたとコンビニオーナーである
おじさんがわざわざ
追っ掛けてきてくれたのだ。


あたしの妄想だと
若い年下男子なんだけど……。


はぁ……。


あたし、なにやってんだろ。


おじさんに渡された一円玉を
取り敢えず、
財布にしまおうとしたときに、
ふと、手元に目がいく。


ささくれだっていて
みっともない、手だった。


これじゃ、ダメか。
恋の一つもできやしない。


帰ったら爪の手入れして
さっき、買ったマニキュア塗ろう。


やっぱり、赤にして良かった。


今は攻めなきゃ。


ナチュラルカラーは
また今度でいいや。


誰かと恋に落ちた時に
あの甘い空気に包まれた時に


その時のために優しい色は
取っておこう。


あたしは駅までの道のりを
胸を張り
颯爽と歩いた。









【恋したい女】







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