ラブスペル
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佐竹氏の車で送ってもらった私達は、殆ど言葉を交わさなかった。

私は少しの気恥ずかしさと、一緒に居られる安堵感を胸に秘め。

陽希といえば、少し眠いのか目を閉じたまま、私の手の平を親指でなぞる様に撫でるだけだった。

2月の夜の空気は冷たいけれど、陽希と繋いだままの手は暖かい。

私は陽希に導かれるまま、彼のマンションへ来ていた。


「……奪還成功」

陽希は、小さな笑みを浮かべてマンションのカードキーを通していたが、玄関の扉が閉まった瞬間、私の髪に手を差し込み、強引に唇を奪った。

「う…んんっ」

陽希の熱を感じる執拗な口付けに、私の声が漏れる。

どの位の時間が経ったのか、陽希と唇を合わせているのか感覚が無くなってきた頃、彼の唇が離れた。

「……会いたかった」

同時に同じ言葉を呟くと、陽希の腕がギュウっと私を抱き締める。

陽希に抱かれると、長身な自分が華奢な女の子のように感じる。

「俺が店に行かなくても美知佳さん、ちゃんと会いに来た?」

「ん。もう少し遅くなってたかもしれないけど」

ハルのお陰で強制終了出来たからね。


陽希は小さな溜息を吐くと、私の手を引っ張ってリビングを通り越し、ドアで隔てられている寝室へと促した。

寝室には、ウッディブラウンを基調にしたクィーンサイズのベッドが存在感を示している。

私が自分のコートを脱ごうすると、透かさず手を貸してくれた。

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