Sweet*Princess


「ご飯行こう」


「あ、はーい…」





長い廊下をあの“氷の王子様”と歩いてるのは不思議な感じがする。


だってすごく遠い存在だったんだもん。


キャーキャー言われて、女子生徒の憧れの壱斗。


私は、どこにでもいる普通の女子高生。


まさかこの人が私の旦那様になるなんて、ほんとにいいのかな…?


「そーいや、さ…」


静かな廊下に、壱斗の低い声が響く。


「どうしたんですか?」


「姫乃はさ…いいの?俺と結婚。好きな人とかいねぇの?」


「いますよ?」


「は?!ダメじゃん!この話、やめてもらう?」


「大丈夫ですよ!その人は、絶対に叶わない人だから」


「……どんな奴なの?」


「すごく、優しい人ですよ?て言っても一回しか会ったことないんですけど。よく覚えてないし」


「は?どういう意味?」


「助けてくれたんです……私を」



あれは高校の入学式の日。


「もうー、入学式に遅刻とかほんとありえない!」


私は高校までの道のりを一生懸命走っていた。


あと少しで学校…って時。


渡らなければならない青信号が、点滅している。



「あ、待ってぇ!!」


渡ろうとした、瞬間。



誰かの「危ない!」って声と、急ブレーキの音が耳に響いたー……


.
< 13 / 231 >

この作品をシェア

pagetop