Sweet*Princess
「ご飯行こう」
「あ、はーい…」
長い廊下をあの“氷の王子様”と歩いてるのは不思議な感じがする。
だってすごく遠い存在だったんだもん。
キャーキャー言われて、女子生徒の憧れの壱斗。
私は、どこにでもいる普通の女子高生。
まさかこの人が私の旦那様になるなんて、ほんとにいいのかな…?
「そーいや、さ…」
静かな廊下に、壱斗の低い声が響く。
「どうしたんですか?」
「姫乃はさ…いいの?俺と結婚。好きな人とかいねぇの?」
「いますよ?」
「は?!ダメじゃん!この話、やめてもらう?」
「大丈夫ですよ!その人は、絶対に叶わない人だから」
「……どんな奴なの?」
「すごく、優しい人ですよ?て言っても一回しか会ったことないんですけど。よく覚えてないし」
「は?どういう意味?」
「助けてくれたんです……私を」
あれは高校の入学式の日。
「もうー、入学式に遅刻とかほんとありえない!」
私は高校までの道のりを一生懸命走っていた。
あと少しで学校…って時。
渡らなければならない青信号が、点滅している。
「あ、待ってぇ!!」
渡ろうとした、瞬間。
誰かの「危ない!」って声と、急ブレーキの音が耳に響いたー……
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