Sweet*Princess
「姫ちゃん?」
部屋に戻ると、雅斗さんは私を少し怒りながら出迎えた。
「なんで電話しなかったんだよ!どこ行ってた?しかも、その荷物……」
「うん。壱斗のところに行ってたの。」
「………」
「大丈夫だよ。ちゃんとさよならしてきた。」
私がそう言うと、雅斗さんはあからさまに安心した顔を見せた。
……でもね。
雅斗さんにも、さよなら言わなくちゃいけないの。
「……雅斗さん」
「ん?」
「私ね、広島に行こうと思うの」
「……広島?」
「うん。実はお父さんに単身赴任の話が出てて、それに着いて行こうと思う」
「姫ちゃん、それって……」
「うん、もうここには戻ってこない。雅斗さんの気持ちにも……応えられない」
「姫ちゃん……」
背が高いはずの雅斗さんはなぜか小さく見えて
私は子どもをあやす、母親の気分だった。
「雅斗さん、ありがとう。私、あなたのおかげで今日壱斗とちゃんと向き合えたよ。」
「俺こそ……ほんとの恋を教えてくれてありがとう」
私を抱き締める雅斗さんは最後まで温かくて……、壱斗がいなければ私は絶対に雅斗さんを好きになっていただろうな
そう思った。
*