私は男を見る目がないらしい。
 

……ううん。

でも、私が失ったのは、“たったの3万”だけじゃないんだ。

心だってこうやって。

……もしかして、朔太郎はお金なんかよりも私がこうなることを狙ってた?

昔フラれた腹いせに私に仕返しをしたかった、ってことも考えられるんじゃないだろうか……?


「とにかくよ。もうそんな男のことは忘れなさい」

「っ!」

「お金奪って、連絡先消して、姿を消す男なんて、覚えておく価値もないわ。言っておくけど、美桜はそこそこいい女なの。そんな馬鹿な男にはもったいないわ。美桜に見合う男なんて世の中にはいくらでもいるし、すぐ見つかるわよ。もっといい男がね」

「……そこそこ……ふふっ」

「……」

「っ、……ふ、」


いつもだったら「そこそこって酷くないですかー!?」なんて笑い飛ばすのに。

笑った後には慰めてくれている理子さんの言葉に気付いて、照れ笑いをして。

でも……、今は笑いたいのに笑えないよ。

 
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