私は男を見る目がないらしい。
 



理子さんの言いつけ通り、私は6時前に会社の1階のロビーに行くと、すでにそこには理子さんがいて「遅い!」と一蹴されてしまった。

まだ時間前だと言おうとしたけど理子さんは歩き出していて、私は慌てて追いかけた。


そんなこんなで理子さんに連れてこられたのは、少しオシャレな居酒屋の個室だった。

頼んでいたビールが来る。

店員さんが出て行くと同時に、いつものように「お疲れ様」と言い合い、理子さんとカチンとグラスを合わせて、グラスに口をつけてビールをグビッと流し込む。

ぷはーっとつい声が出てしまうけど、それは理子さんも同じでいつものことだ。

こうやってお酒を飲むのは久しぶり。

……あの、朔太郎がいなくなった日以来だから。

……って、ダメダメ。

また朔太郎のこと思い出してる。

もう忘れなきゃいけないんだから、もう思い出しちゃダメだ。

そう言い聞かせて、私は再び、グビッとビールを流し込んだ。


「美桜」

「はい?」

「もう大丈夫なの?泣いたりしてない?」

「!……理子さんからそんな言葉が出るとは思いませんでした……」

「やだ、しつれーね!本当に心配してたのよっ?」

「……ありがとうございます。はい、でももう、大丈夫ですから」


……大丈夫にならなきゃ、みんなに心配かけるから。

これ以上は私のちっぽけなプライドが許さない。

私はもう、大丈夫。

泣く回数だって、減ったんだから。

 
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