私は男を見る目がないらしい。
*
理子さんの言いつけ通り、私は6時前に会社の1階のロビーに行くと、すでにそこには理子さんがいて「遅い!」と一蹴されてしまった。
まだ時間前だと言おうとしたけど理子さんは歩き出していて、私は慌てて追いかけた。
そんなこんなで理子さんに連れてこられたのは、少しオシャレな居酒屋の個室だった。
頼んでいたビールが来る。
店員さんが出て行くと同時に、いつものように「お疲れ様」と言い合い、理子さんとカチンとグラスを合わせて、グラスに口をつけてビールをグビッと流し込む。
ぷはーっとつい声が出てしまうけど、それは理子さんも同じでいつものことだ。
こうやってお酒を飲むのは久しぶり。
……あの、朔太郎がいなくなった日以来だから。
……って、ダメダメ。
また朔太郎のこと思い出してる。
もう忘れなきゃいけないんだから、もう思い出しちゃダメだ。
そう言い聞かせて、私は再び、グビッとビールを流し込んだ。
「美桜」
「はい?」
「もう大丈夫なの?泣いたりしてない?」
「!……理子さんからそんな言葉が出るとは思いませんでした……」
「やだ、しつれーね!本当に心配してたのよっ?」
「……ありがとうございます。はい、でももう、大丈夫ですから」
……大丈夫にならなきゃ、みんなに心配かけるから。
これ以上は私のちっぽけなプライドが許さない。
私はもう、大丈夫。
泣く回数だって、減ったんだから。