私は男を見る目がないらしい。
*
今日は理子さんにご飯に誘われたはずだった。
普通に、いつものように。
だからてっきり二人で美味しいお店にご飯にでも行くんだろうと思っていた。
なのに……目に写るのは数人の男女の無駄なくらいにキラキラと浮かべられた笑顔と気合い。
目の前に広がる光景に、私は呆然としていた。
「よろしくお願いしまーすっ」
「こちらこそよろしくねー!出逢いにかんぱーい!」
「……。」
カチン、カチン、とグラスが目の前で次々と交差する。
私も無意識のうちにグラスを前に出して、近くのグラスにカツンと当てた。
……どういうこと?
これってまるで……、合コンなんだけど。
いや、“まるで”なんかじゃなくて“立派に”合コンだ。
みんながメニューを見ながら、これおいしそうだよなー、なんて話し始めた時、私は隣ににこにこ笑顔で座る理子さんの服をこっそり引っ張った。
「……理子さん」
「やだっ、美桜!何その顔っ。笑顔笑顔っ!楽しくいくわよっ」
「……」
……ダメだ。
完全に作りに入ってる。
いつもは滅多に見れないような理子さんのキラキラ笑顔に、私ははぁと小さく息をついた。
見事に騙された……。
理子さんは自分と私の次の相手を見つけるために、ここに来たんだ。
「じゃあ早速自己紹介でも~」
幹事と思われるイケメンがそんなことを言い始め、ちょっと面倒だなと思いながらも、来てしまったものは仕方ないし気晴らしにはなるだろうと、私はいつもよりほんの少しだけ上げたテンションでとりあえずその場を楽しむことを決めた。
とは言っても、今は恋愛はする気になんてなれないし、ここでいい人を見つけようとは思えなかったけど。