私は男を見る目がないらしい。
 

朔太郎が私の前から居なくなって、2ヶ月弱。

まだ、朔太郎は私の心の中に残っている。

忘れなきゃいけないと思えば思うほどその影を追いかけてしまうことに気付いて、無理に忘れることをやめてしまった。

会わない時間が続けばきっと、忘れることができるよ、と言い聞かせて。


「……はぁ。また思い出しちゃってるし……私って本当にバカだなぁぁ」


私は一人、くくくと嘲笑した後、ふと我に返って笑うのを止める。


「……いつになったら忘れられるのかな」


ぽつりと溢すと、すごくわびしい気持ちになった。

忘れられる日が来るなんて、やっぱり思えなかったから。


「……いや、忘れられる、忘れられる、忘れられる!いつか、必ず!」


“ら行”のオンパレードに噛みそうになりながら呪文のように唱えた後、ふと部屋の壁にかかっている時計に目を移すと、家を出ないといけない時間の30分前になっていた。


「うそ!もうこんな時間!?準備しなきゃ!」


今日は理子さんとご飯に行く約束をしているのだ。

遅れたらまた、時間に厳しい理子さんに怒られてしまう。

私はどたばたと慌てて化粧をし始めた。

 
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