私は男を見る目がないらしい。
 

……あ、そうか……朔太郎は今後悔してるんだ。

私の勤め先を聞いておけば、こうやってまた会うこともなかったのにって。

捨てた女の顔なんて見ずに済んだのにって。

……“まったく、入社早々捨てた女に会うなんて、最悪なスタートだな。まいった”、って。

でも、それを言うなら私だって同じだ。

新しい年のスタートの日に、まさか自分を捨てた男が同じ会社に入社してくるなんて。

もう、忘れたかったのに……こんな不意打ちされたら、やっと固まりかけていた気持ちが崩れそうになる。

……泣きそうになる。

でも泣くなんて私のちっぽけなプライドが許さない。

絶対に泣いちゃダメ。

そう思った私の口に出たのは、朔太郎のことを拒絶するような、突き放すような敬語だった。

震えそうになる声を必死に抑えて、言葉を発する。


「……用は、何ですか?」

「え?」

「ここに来た用事です。何もなくてここには来ないでしょう?」

「何いきなり冷静になってんだよ。しかも敬語とか気持ち悪いし」

「……仕事忙しいんです。用があるなら早く言ってください。……邪魔なんです」


……お願いだから、早く私の前から姿を消してよ。

苦しいの。

……泣きそうなの。

無意識にぎゅっと拳を握りしめてしまう。

 
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