私は男を見る目がないらしい。
……何で?
世間にはこんなに会社があるのに、何でこの会社なの?
そんな奇跡みたいな偶然なんていらないのに。
やだ、もう、こんな苦しい気持ちなんて捨ててしまいたいのに……
あの日から2ヶ月も経つのに、まだ私の中はこんなに朔太郎でいっぱいで……
ぼろぼろと流れ落ちる涙をそのままに、私は喉に詰まったような声にならない声で言葉を吐き出す。
「やだ、もう……っ」
無意識にぎゅっと目を閉じたのと同時に、手に持っていた資料を握り締めてしまう。
くしゃっ、という音にハッとして、私は慌てて資料に入ってしまったシワをぐいぐいと伸ばす。
自分の鼻をすする音と、カサカサという音だけが私を包み込む。
「……」
もうこれ以上は戻らないだろうというところまで伸ばした後、ハァとため息が出た。
白衣の袖で涙を拭う。
……少しだけ冷静になった。