私は男を見る目がないらしい。
 

……朔太郎は2ヶ月前と殆ど何も変わってなかった。

私を呼ぶその声も、私をからかうような意地悪な態度も、そして、その笑顔も。

変わっていたのは外見だけ。

スーツ姿はすごく決まっていて、人の注目を集めるような姿で。

あの外見でにっこりと笑い掛けられれば、つい契約OKしてしまう人もいるんじゃないかと思うくらいだった。

……正直、今まで見てきた朔太郎の中で一番カッコいいと思った。

なんで朔太郎はあんなに普通だったんだろう?

避けるような態度も全くなかったし、むしろ、私をからかって反応を見て愉しんでいる様子だった。

普通は自分が捨てた女に出くわしたら気まずいものじゃないの?

それとも、理子さんのように別れたけど“友達”として接そうとしてるの?


「……わかんない」


朔太郎にその理由を直接聞けばいいのかもしれない。

“何で姿を消したの?”って。

でも……聞けるわけはない。

わかってはいても、結局怖いんだ。

“美桜は俺には必要ないから、捨てたんだ”と、その口からはっきり言われてしまうのが。

そんなこと言われてしまったら、私の朔太郎への気持ちを全部否定されることになる。

そんなのは……やっぱり嫌。

私にとって、朔太郎は家族以外の異性ではじめて大切だと思えた人なんだから。

……たとえ、朔太郎が私のことをこれっぽっちも好きじゃなかったとしても。

だから、このまま何も聞かずに自然に任せて朔太郎への気持ちを忘れてしまう方がいいんだ。

これ以上、自分からすすんで傷付く必要はない。

 
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