私は男を見る目がないらしい。
 

絵文字もなくシンプルな文面には、この前は話せて楽しかったという内容、そして、都合のいい日にご飯に行こうという内容が書かれていた。


「……ご飯って、本気だったんだ」


オクトーバーフェストでのお礼にご飯にでもとは言われていたけど、あの場の社交辞令だろうと思っていたのに。

深い意味はないとは思うけど、これって二人でご飯に行くってことだよね?

お酒の入っていない冷静な頭で考えてしまうと、何となく少し戸惑ってしまった。

どうしよう、と少し悩む。

でもこれ一度きりだろうし、長谷部さんはすごく話しやすい人だったからいいかな、と私はメールの返信をし始めた。

私はついメールを放置してしまう癖があるから、誘いのメールの時はできるだけすぐに返事をするようにしているんだ。


「“しばらく予定は入ってないので、いつでも大丈夫です。”と」


その一言だけ打ち込み、女のくせに絵文字もない素っ気ない返信でごめんなさい、と思いながら、私は送信ボタンを押した。

携帯をローテーブルに置いて、ふぅ、と一息つく。

長谷部さんのことを頭の中に思い浮かべる。


「律儀な人なのかな。朔太郎とは大違い……、って何考えてるんだっ、私!」


何の引っ掛かりもなくすんなりと出てきてしまった朔太郎の名前。

私の中にいる朔太郎の存在がまだ大きいことを示しているようで、すごく焦ってしまう。

そして、5日前に起こった会社での出来事を思い出してしまって、再び私の頭の中は朔太郎のことだけで覆い尽くされる。

 
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