私は男を見る目がないらしい。
 



「お腹いっぱーい!」

「すっごい食べてたよね。ストレス発散?」

「昨日からあまり食べてなかったんだよねー。それにおいしかったから!」

「え、もしかして体調悪かった?大丈夫?」

「あっ、大丈夫!大したことないから。うん」

「そう?ならいいけど……」


心配そうな長谷部さんの声が落ちてきて、慌てて笑顔を向ける。

……食欲がなかったのは泣きすぎて気持ち悪かったからだったけど、長谷部さんと一緒に過ごしてそんなのはどこかにいってしまった。

やっぱり私はここにいるのが正解なんだ。

……すごく安心できる居場所。不安な気持ちが生まれない場所。

隣を私の歩調に合わせてゆっくりと歩いてくれる長谷部さんを横目でちらりと見上げて、私は口を開く。


「……長谷部さん」

「ん?」

「ワガママ言ってもいい?」

「え、何?珍しいね」


少し驚いたような声が横から落ちてくる。

私はすぅっと息を吸った。


「……これから先、嘘はつかないで欲しい」

「……え?」

「約束してくれる?」

「……うん」


少し考えた後に、長谷部さんはゆっくりと頷く。

それを見て、きっとこの人なら大丈夫だと最後の覚悟を決めた。

長谷部さんのことを信じる。

これから先、この人のことを信じていこう。

 
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